| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-07

セイタカアワダチソウ上の優占種であった外来昆虫アブラムシに何が起こったか?

*安東義乃(京大生態研セ), 内海俊介(京大生態研セ), 大串隆之(京大生態研セ), Timothy P. Craig(Minnesota Univ.)

外来植物の定着は、原産地でその植物を利用している植食性昆虫の侵入を促進させる可能性が指摘されている。北米原産の外来植物セイタカアワダチソウの上では、同じ原産地由来の外来昆虫セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシが優占種として存在していた。このアブラムシはセイタカアワダチソウのスペシャリストの吸汁性昆虫であり、1990年代に日本での定着が確認された種である。しかし、2004年以降その個体数は著しく減少し、これまでセイタカアワダチソウ上に存在しなかったアワダチソウグンバイが優占種となった。このグンバイは近年、定着が確認された同じ北米由来の外来昆虫で、原産地でもセイタカアワダチソウを主に利用する吸汁性昆虫である。本研究では、この外来昆虫アブラムシの減少した要因を明らかにするため、グンバイによるアブラムシへの影響と2種の外来昆虫の捕食圧を操作実験によって調べた。また、アブラムシの減少の実態を探るため、野洲川の河川敷でセイタカアワダチソウ上のアブラムシとグンバイの密度と分布についての地域調査を行った。その結果、アブラムシは植物上にほとんど存在せず、存在してもコロニーサイズは非常に小さいことが明らかとなった。一方、グンバイは地域差はあったがどの植物上にも多く存在した。グンバイの吸汁痕を有翅型アブラムシは忌避するだけでなく、捕食者によってアブラムシは著しく密度を減少させた。アブラムシを捕食する昆虫種は優占種であった年に比べ20倍以上も増加していたが、グンバイの捕食者はほとんどいなかった。したがって、アブラムシはグンバイの定着と捕食圧の増加によって減少した可能性が高い。

日本生態学会