| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-09

生息範囲に影響する雌の産卵場所選択の効果ー海岸環境を利用する両生類の場合ー

原村隆司(京大・理・動物行動)

卵は一般に生物・非生物要因の影響を受けやすいため、雌は卵の生存率を上げるために産卵場所を選択しなければならない。リュウキュウカジカガエル(Buergeria japonica)は沖縄諸島に分布し、海岸環境でも繁殖する興味深い種である。しかし海岸環境には両生類の卵の生存に強く影響する高塩分が存在する。このことから、高塩分を避けて産卵する雌の産卵場所選択が、本種が海岸環境に適応している原動力の一つであると考え、研究を行なってきた。調査の結果、他の両生類と同様に本種の卵の耐塩性は低いこと、雌は水中の塩分濃度の違いを認識でき、高塩分の水域を避けて産卵場所を選択していること、また、潮汐の影響(潮の満ち引き)も考慮に入れて、卵が高塩分にさらされないように産卵場所を選択していることが明らかとなった。以上のことから、本種においては雌の産卵場所選択が、海岸環境で繁殖できる要因の一つであり、本種の生息範囲にも影響を与えていると考えられる。

日本生態学会