| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-10

土壌炭素動態に微生物群集の組成は関係するのか?〜熱帯林生態系における検証

和穎 朗太(京大・生態研),北山 兼弘(京大・生態研),Teri Balser (U.of Wisconsin-Madison)

既存の生態系プロセスモデルでは、分解者群集の組成は考慮されていない。このようなモデルで、温暖化などの環境変化に対する土壌炭素動態の応答を予測できるのだろうか?この問いに答えるための第一歩として、(1)気温の異なる森林生態系における土壌炭素の動態と微生物群集の組成を調べ、(2)微生物群集組成の差異が、温度の違いによるものか、「有機物の質」の違いによるものかを考察した。ボルネオ島キナバル山の3標高X2母岩、合計6つの熱帯林土壌を用いて、以下の測定を行った。現場での炭素動態の指標として、土壌炭素の滞留時間を純一次生産と土壌炭素量から求め、易分解性炭素プール量を土壌培養実験から求めた。微生物バイオマーカー(リン脂質)の定量から土壌微生物群集の組成を特徴づけた。

年平均気温12℃の標高2700mでは、表層10cmの土壌炭素の平均滞留時間は13〜27年、現存する土壌中の易分解性炭素量は3mg/gであった。一方、温暖(24℃)な標高700mでは、分解は速く、滞留時間は3〜5年、易分解性炭素量は0.6mg/gであった。リン脂質解析から、温暖な低標高にゆくに向かい、細菌:真菌比とグラム陽性型細菌の優占度が上がることが判った。これら微生物群集の変化と、土壌炭素、窒素量やC:N比の間に強い相関はなかったが、気温との間には有意な相関が見られた。以上の結果から、土壌炭素動態と微生物群集組成の対応関係が示された。また微生物組成の差異は、一般に考えられている「有機物の質」の影響よりも、温度の影響を直接的に受けている可能性が示唆された。真菌と細菌では、最適温度や利用できる有機化合物が異なる可能性を考えると、分解者群集の組成を導入することで、生態系モデルの精度向上が期待できる。

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