| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-039

熱帯低地林生態系のバイオマスと生元素比 -サバ州デラマコットの伐採強度が異なる森林間での比較-

*今井伸夫, 喜多智, 北山兼弘 (京大・生態学研究セ)

高温多雨のために土壌風化が進んでいる湿潤熱帯では、森林の生産や分解がしばしばリンによって制限される。一方、一次遷移の初期過程では、窒素の制限を受けることが知られている。一次遷移初期では植物の生葉やリターのC/N比は高いが、遷移の進行とともにしだいにC/N比は低下してゆく。やがて今度は植物のリンの利用効率が増加し、生葉やリターのN/P比やC/P比は増加する。このような化学量論的なパターンは、これまで主に自然林において詳しく研究されてきたが、二次林においては十分に明らかにされてこなかった。

伐採は、森林から有機物を系外に大量に収奪するとともに分解活性の高い表層土壌の流亡・物理的緊密化を引き起こす。それに伴い地上部では樹種組成の変化が、地下部では無機化速度や可給態栄養塩量の低下が起こる。このような一次遷移初期にも似た環境が生じた二次林では、植物体や土壌のC・N・Pは、その量だけでなく存在比も自然林のそれとは異なることが予想される。そこでマレーシア、サバ州デラマコットにおいて、伐採に伴う(1)土壌の無機化特性や可給態栄養塩量の変化と(2)生態系内のC・N・Pバイオマスとその存在比の変化を明らかにした。

自然林と択伐後の二次林(それぞれ2ha)において、毎木調査により地上部バイオマスを算出するとともに、優占樹種(13種)の林冠葉・樹皮・材を採取した。地表リターと1m深までの土壌を層ごとに採取した。これらの化学分析を行い、森林の地上部(葉・樹皮・材)と地下部(地表リター、根、土壌)それぞれでのC・N・Pの量と存在比を調べた。また、土壌の可給態窒素(NO3,NH4)リン(NaHCO3,NaOH抽出)の量、窒素無機化速度やリン酸分解酵素活性を測定した。これらの結果から、伐採に伴う生態系のC・N・Pバイオマスとその存在比の変化とその要因について考察した。

日本生態学会