| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-046

多年生草本レンゲショウマ個体群の3年間の動態と齢構造

*鈴木まほろ(岩手県博), 木村恵(東大ア生セ)

レンゲショウマAnemonopsis macrophylla L.(キンポウゲ科)は、地上シュートの維管束痕が地下茎に毎年残り、そこから個体年齢を推定できるため、多年生草本の生活史と個体群動態・繁殖戦略の関係を研究するには優れた材料である。

2005年にレンゲショウマ野外個体群の中に2m四方のプロットを3つ設置し、その中で葉の幅が5cmを超えるすべての個体にマーキングをして、3年間の動態を追跡した。調査した個体の総数は143個体であった。2007年秋までに94%の個体を追跡することができ、このうち死亡が確認されたのは1個体であった。また28%の個体は、まったく地上部を出さずに休眠する年があった。

2007年秋に各プロットの半分(1m*2m)から合計67個体を掘り上げ、地下茎から年齢を読み取った。最低年齢は9才、最高年齢は55才であった。いずれのプロットでも20〜30才の個体が最も数が多く、全体としては、中央部が高い山型の年齢分布を示した。

また、当年生実生と葉の幅が5cm未満の個体を実生として、2006・7年にその数を調べた。06年の当年生実生は1平方mあたり4.7本で発芽率は1.5%と推定された。06年の実生全体の翌年までの平均生残率は21%であった。一部の個体で年齢を調べたところ、1〜10才の幅を示した。これらの動態と齢構造のデータから、この個体群で現在もっとも死亡率が高いのは0〜10才の期間であることが推定された。

掘り上げた地下茎は長さと太さを計測し、乾燥重量を測定した。地下茎のサイズ(体積および重量)と年齢との間には有意な相関がなかったが、葉面積合計と地下茎サイズとの間には強い正の相関があった(r > 0.7, p < 0.01)。これにより、地下部の資源量と光合成器官のサイズおよび繁殖投資量との間には密接な関係があることが示唆された。

日本生態学会