| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-059

西表島仲間川におけるヤエヤマヒルギとオヒルギの定着戦略とその環境

*浦田悦子,鴨田清志,藤原一絵

仲間川の沖積平野の下流域にはデルタ地帯が広がり、日本最大のマングローブ林が成立している。西表島はマングローブが生育可能な北限域に近く、また、仲間川のマングローブ林は観光資源としても有用である。このマングローブ林で主に植生帯を構成しているマングローブ種であるオヒルギとヤエヤマヒルギ(一般にオヒルギよりも海側に植生帯が成立)について、海側から陸側に向かってベルトを引き、成木、稚樹、実生の定着環境と、生育状態を調べた。定着環境については、土壌の粒形、潮汐による冠水頻度に関わる地盤高、土壌に含まれる可給態窒素の量、光条件を計測し、個体の生育状態については、成木の場合は樹高、DBH、枯損度、林冠葉の葉緑素濃度、稚樹と実生については樹高、節の数、成熟葉の葉緑素濃度を計測した。結果、オヒルギとヤエヤマヒルギ両種において稚樹と実生の定着環境は、光環境に高く依存し、次に地盤高が関わっていた。そして、オヒルギの実生と稚樹は、ヤエヤマヒルギよりも低い光環境に成立出来ることがわかった。この事は、ヤエヤマヒルギの植生帯が成立している場所に、ヤエヤマヒルギの実生が侵入して稚樹となるのは難しく、低い光環境においても侵入可能なオヒルギの稚樹が成木となる頃にはヤエヤマヒルギの実生が侵入しにくい環境が成立していると考えられる。

日本生態学会