| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-095

カンコノキ-ハナホソガの絶対送粉共生系における開花フェノロジーの多様性

*後藤龍太郎(京大・人環),岡本朋子(京大・人環),川北篤(京大・人環),加藤真(京大・人環)

カンコノキ属植物の花は、それらの子房に産卵する種特異的なハナホソガ属の雌によって送粉されている。ハナホソガの幼虫は発達途中の種子を食べて成熟するが、一部は食われずに残るため、両者は相互に繁殖を依存しあう絶対的な共生関係にある。カンコノキはハナホソガとの高い種特異性を維持しながら300種以上という華々しい多様化を遂げたが、その背景には植物の開花フェノロジーと送粉者の生活環との間の密接な共適応があったと考えられる。そこで本研究では西南日本に広く分布し、一部の地域で同所的に生育するカンコノキ属植物4種の年間を通じた開花パターンを調査し、それらを送粉するハナホソガの生活環を明らかにした。

その結果、カンコノキ属植物には春先に一斉に開花し、秋に結実する種(ウラジロカンコノキ)と、個体間の同調性は明瞭でないものの、年に複数回開花、結実する種(カンコノキ、カキバカンコノキ、キールンカンコノキ)が見られることがわかった。前者を送粉するハナホソガは年一化性であり、開花から結実までの6ヶ月もの間、雌花の中で卵休眠を行っていた。一方後者を送粉するハナホソガは年多化性であり、春から秋にかけて継続的に活動が見られた。これらの結果から、カンコノキの開花フェノロジーとハナホソガの生活環との間には密接な相互適応が見られることがわかり、こうした種ごとの生活史の多様性が、高い種特異性の維持や多種共存に関わっている可能性が示唆された。

日本生態学会