| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-096

乾燥フタバガキ林主要樹種の6年間のフェノロジー

*伊東明・S. Whitchaphart・名波哲・山倉拓夫(大阪市大・院・理)・K. Sringernyuang(メジョー大)

北タイの乾燥フタバガキ林で主要6樹種(Dipterocarpus obtusifolius、 Dipterocarpus tuberculatus、 Shorea siamensis、Shorea obtusa、Gulta usitata、 Dalbergia oliveri)のフェノロジーを10日間隔で6年間調査した。ワイブル分布モデルを用いて、各樹種の開花日、落果日、落葉日、開葉日の平均と落葉期間を年毎に求めた。

その結果以下のことがわかった。1)平均落葉日は年変動が大きく、連続無降雨日数によって種ごとにほぼ決まっていた。最も落葉の早いDalbergiaは約20日の無降雨で、最も落葉の遅いD. obtusifoliusは約80日の無降雨で落葉が見られた。2)平均開葉日は年変動が小さく、多くの種が乾期中の春分の日前後に毎年開葉した。Dalbergiaは、毎年、最初の降雨直後に開葉しており、降雨が開葉を促していると思われた。3)落葉期間は種ごと年ごとに大きく異なっており、0日〜150日の幅があった。4)毎年ほぼ全個体が開花したD. obtusifoliusを除いて、開花個体の割合の年変動は大きく、また、種間で開花年に同調は認められなかった。開花個体の割合と気象データの間に明瞭な関係は認められなかった。5)各種の平均開花日の年変動は予想外に小さく、数週間程度しかなかった。6)平均落果日の年変動は小さく、フタバガキ科4種の果実は、毎年、3月から4月の風速が強まる時期に散布された。

以上の結果から、乾燥フタバガキ林のフェノロジーは、落葉日を除いて、予想していたよりも年変動が小さく、多くの樹種の開花と開葉が、降雨とは無関係な安定した環境要因(日長や温度)によって決められていると思われた。

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