| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-106

絶滅危惧種オオセッカの繁殖生態

*高橋雅雄(立教大・動物生態),上沖正欣(立教大・動物生態),蛯名純一(NPOおおせっからんど),宮彰男(NPOおおせっからんど),上田恵介(立教大・動物生態)

オオセッカは極東固有のウグイス科の希少種で、日本での繁殖個体数は約2500羽と推定されている。そのため絶滅危惧1Bに指定され法的に保護されているが、生態学的研究は限られている。

本種は背丈2m前後のヨシ原を好み、本種の希少性や過去に繁殖地を転々と変えた経緯については環境の選好性から説明されてきた。しかし、繁殖生態に関する研究はほとんど行われていないため、環境選好と繁殖生態との関係については不明なままである。

演者らは2007年の5月から9月にかけて、国内最大の繁殖地である青森県三沢市の仏沼干拓地と周辺の休耕田にそれぞれ調査地区を設置し、繁殖生態の詳細な記載とともに、両調査地区間の繁殖生態の比較を行った。

両調査地区で個体識別した合計52個体のなわばりオスを継続観察し、61巣の繁殖を確認した。繁殖成功率は93.4%と非常に高く、捕食は稀だった。繁殖は6月上旬から9月中旬まで続いたが地区間でピークが異なり、休耕田では6月中旬にピークを迎えたのに対し、干拓地では8月中旬と約2ヶ月のずれが見られた。同様になわばりオスの個体数も地区間でピークが異なった。また、オスの1シーズンあたりの獲得巣数・巣立ち雛数も地区間で異なり、休耕田では0.9±0.2巣、3.6±0.8羽(N=34)であったのに対し、干拓地では1.7±0.2巣、6.7±1.0羽(N=18)とどちらも少なかった。さらにオオセッカの巣は形状と営巣環境の違いから明確に3タイプに分類されたが、地区間でタイプごとの出現頻度は有意な違いが見られた。以上のような干拓地と休耕田というオオセッカの生息環境の差異に関して、繁殖成績に関わる要因を考察し、今後の保護についての提言を行う。

日本生態学会