| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-118

ため池におけるカワバタモロコの繁殖スケジュール

*鈴木 規慈,原田 泰志(三重大・院・生資),前畑 政善(琵琶湖博物館)

コイやフナなどのコイ科魚類の多くは初春から初夏にかけて繁殖を行う.コイ科魚類の産卵は,たとえば,モツゴの場合,成熟は春期の水温上昇および日長と関連している(朝比奈ほか,1985).しかし,多くのコイ科魚類で繁殖開始に係わる環境要因については不明な点が多い.

カワバタモロコHemigrammocypris rasborellaは,コイ科ダニオ亜科カワバタモロコ属に属する,体長3〜5cm程度の小型の淡水魚である.本種の繁殖は5月から7月にかけて行われるといわれるが(岡田・中村,1947;前畑,2001),野外での繁殖生態に関する知見は少なく,また,産卵がどのようなきっかけで始まるかについても不明である.

そこで,本研究では,滋賀県下のため池において,本種の産卵が,いつ,どのようなタイミングで始まるのかということを明らかにするために,1)成魚の成熟度の変化,および,2)卵数・仔稚魚の個体数の変化,3)水位および水温・気温の変化,に着目し野外調査を行った.

調査は,2007年の5月から8月に,モンドリによる成魚の捕獲および稚魚ネットによる卵・仔魚および稚魚の掬い取りにより行った.その結果,成魚は,6月上旬から成熟個体が確認されるようになり,8月下旬まで確認された.また,卵および仔稚魚は,6月中旬から8月下旬まで確認されたが,特に,7月にかけて増加する傾向が見られた.また,本種の産卵が見られた期間に,調査地の水位の上昇が見られた.この時期は,梅雨の時期と重なっており,採集卵数と水位との間に相関関係が認められた.一方で,水温および気温と採集卵数の間には相関が認められなかった.これらの結果から,本調査地における本種の繁殖期は6〜8月であり,産卵開始が梅雨による水位の上昇と関係していることが示唆された.

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