| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-131

タナイス目Zeuxo sp. の雄にみられる鋏脚多型と性成熟

*坂本隆太朗, 青木優和 (筑波大・下田臨海)

タナイス目はフクロエビ上目に属する海産小型甲殻類であり、沿岸から深海まで世界に広く分布し、約700種が知られている。本目では雄の多型や性比の偏りや、性転換および環境性決定をおこなう種が知られており、多様な繁殖戦略を持つことが予想される。しかし、その繁殖生態についての研究は少なく、未知の部分が多い。本目の雄では鋏脚が巨大化するが、この外部形態の成熟が生殖巣の成熟と一致しているのかについては不明である。本研究ではノルマンタナイスZeuxo normaniを用い、外部形態の形成と生殖巣成熟の関係を明らかにすることを目的とした。下田市外浦海岸において2006年5月と2006年7月から2007年8月にかけて毎月アマモを一定量採集し、葉上個体の個体群の組成解析および形態解析をおこなった。その結果、雄では短期的には鋏脚サイズに多型が存在するかのように見えるが、実際は異なるコホートが混在することで鋏脚サイズに複数群が形成されることがわかった。また、雌では体長にコホートが反映されるのに対し、雄では鋏脚サイズ組成に反映された。さらに、体長組成と鋏脚サイズ組成からそれぞれの成長曲線を推定した結果、雌では成長に伴って体の増大に投資するのに対し、雄では体の成長を抑制して鋏脚の増大に投資することがわかった。生殖巣成熟を調べるために、抱卵雌が豊富な時期に採集した雄の切片標本を作製し精子形成を調べた結果、雄の鋏脚が巨大化しはじめる頃にはすでに精子が形成されていることがわかった。

日本生態学会