| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-139

ヌマエビの逃避行動における左右非対称性と捕食被食関係への影響

*竹内勇一(京大・院理), 堀道雄(京大・院理)

タンガニイカ湖の鱗食魚で発見された魚類の左右性は、その後他の魚も共有する形質であることが分かってきた。発表者らは、すでにエビ食魚が形態的・行動的左右非対称性を持つこと(Anim. Behav. in press)、餌となるヌマエビにも腹部の捩れに左型か右型かの二型があり、この形態的左右非対称性は遺伝形質であることを実証した(第54回生態学会)。今回は、ヌマエビの逃避行動(後方への跳躍)に左右2通りがあり、それは各個体の非対称な形態と対応すること、またエビ食魚の捕食成功(エビの逃避失敗)に、両者の左右性が関わっていることを解明する。

まず、鴨川産ミナミヌマエビを用いて、振動刺激による逃避行動実験を行った。すなわち、一個体ずつ大型シャーレに入れ、シャーレを支えている板の裏側から叩いてエビを驚かせ、その逃避方向を上部から高速度ビデオカメラで記録した。その後エビを固定して、腹部の捩れの角度を測定した。その結果、跳躍角度の頻度分布は左右の後方60度付近にピークを持つ明瞭な二山型を描いた。形態との関係をみると、腹部が右に捩れている個体(左型)は主に左後方へ、左に捩れている個体(右型)は右後方へ逃避していた。これらの結果から、ヌマエビが左右性をもつと結論できる。

次に、タンガニイカ湖産ヌマエビL. latipesについて、野外で捕らえたエビ食魚3種の胃から取り出したこのエビとそれを食べた魚の左右性を判定し、両者の対応関係を調べた。3種中2種では、右利き個体は右型を、左利き個体は左型のエビを多く食べていた。残りの1種では、明瞭な関係は見られなかった。従って、ヌマエビの左右性はエビ食魚の左右性との関係の中で実際の被食率に影響し、それによって双方の左右二型が動的に維持されていることが示唆された。

日本生態学会