| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-147

子の世話をするツチカメムシ類における腸内共生細菌の垂直伝播メカニズム

細川貴弘(産総研・生物機能工学),弘中満太郎(浜松医科大・生物),稲富弘一(佐賀大・農),馬場成実(九大院・生防研),深津武馬(産総研・生物機能工学)

陸生カメムシの多くの種では腸内細菌との共生関係が進化しており、一般的に共生細菌はメス親から子へ伝えられる(垂直伝播)。これらの共生細菌はしばしば宿主の成長や繁殖に正の影響を与えることから、宿主には共生細菌を確実に伝播するための形質が発達していることが予想される。また、そのような形質の発達が共生関係の進化・安定化において重要な役割を果たしていると考えられる。しかし伝播に関与する形質の機能的、進化的解析はこれまでほとんどおこなわれていなかった。

ツチカメムシ科のミツボシツチカメムシ、フタボシツチカメムシ、ベニツチカメムシではメス親が子の世話をおこなう。すなわち、メス親は産卵後に卵塊を抱卵して天敵から守り、孵化後にはエサを集めて子へ給餌する。メス親が子の世話をしない種においては共生細菌の伝播のタイミングは産卵時に限定されるが、子の世話をする種では世話中(産卵から子の分散まで)のさまざまなタイミングで伝播が起こりうる。本研究では、上記3種について腸内共生細菌の伝播機構を詳細に解明し、特に伝播が起こるタイミングに注目して種間比較をおこなった。

メス親が卵の表面に塗布した共生細菌を孵化幼虫が摂取するという点は3種で共通していたが、塗布のタイミングには2つのタイプが見られた。ミツボシツチカメムシとフタボシツチカメムシでは産卵時(卵が体外に排出される時)に塗布されたのに対し、ベニツチカメムシでは産卵時には塗布されず、卵が孵化する直前に塗布された。この伝播のタイミングの違いを生じさせている要因を共生細菌の系統・ゲノム特性と関連づけて議論する。

日本生態学会