| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-153

スナネズミの社会的行動に及ぼす匂いの影響

*伊藤兼敏,鈴木惟司(首都大・理工・生命)

野生のスナネズミMeriones unguiculatus は砂漠とステップ域の中間にあたる草がまばらに生えた砂地環境に生息する。スナネズミは地中に巣を作り、社会的集団で生活している。各集団はそれぞれのなわばりを持ち、他集団の個体が近づくと威嚇・攻撃行動が観察される(Agren et al. 1989)。雌雄ともに腹部正中線上に皮脂腺があり、腹部を擦りつけてマーキングを行う。これからもなわばり行動には匂いが強く影響していると考えられる。スナネズミは国内でも実験動物として広く取り扱われており、社会的行動および、行動に及ぼす匂いの影響を調べるのに適した種といえる。

本研究では、下記の3点について飼育実験を行った。まず、異なる近交系2種および、交雑系1種の血縁的に異なる3つの血統をそれぞれ2つがい用意した。それぞれ同血統グループ同士でペアリングを行い繁殖させた。繁殖後、血統および、性別によって6グループに分けて飼育した。

[実験1]匂いによる行動へ影響

各グループをケージで1週間飼育、使用した床敷きを回収した。床敷きはそのケージ内で飼育している個体の糞、尿及びマーキング時の分泌物の匂いが染み付いている。この床敷きと飼育に使った巣箱を匂いの源として行動への影響を調査した。

[実験2]他個体の存在による行動への影響

被検個体を他個体に対面させ、他個体の存在による行動への影響を調査した。実験に用いた他個体は各グループからそれぞれ1個体ランダムに選択した。

[実験3] 被検個体の匂いが与える個体間の行動への影響

被検個体が使用した床敷きを敷き詰めた条件下で、実験2と同様に行った。実験2と実験3を比較し、被検個体の匂いが与える個体間の行動への影響を調査した。

以上より、血統および性別の違いによって、匂いおよび他個体に対する反応の違いを解析した結果を報告する。

日本生態学会