| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-165

三宅島産アカネズミの遺伝的特性とクルミに対する採食行動

*武智玲奈, 林 文男(首都大・理工・生命科学)

伊豆諸島の三宅島に生息するアカネズミは、その形態的特異性から亜種として区別されることがある。本研究では、この三宅島集団の遺伝的特性を明らかにするため、本州(高尾、伊豆半島、房総半島)および伊豆諸島(大島、新島、神津島、三宅島)の7集団に関して、集団遺伝学的解析を行った。各調査地より18〜69頭を捕獲し、皮膚の一部からミトコンドリアDNAのD-loop領域(約300塩基対)を解読し、比較した。その結果、各調査地では、固有のハプロタイプが得られ、三宅島でのハプロタイプ多様度(0.59)は、他の伊豆諸島の集団(0.19-0.73)と同様、本州の集団(0.88-0.93)に比べて低くなっていた。また、ハプロタイプの系統樹を作成すると、伊豆諸島の各集団は異なるクラスターを形成したが、三宅島の集団は新島の集団に近く、これら2つの島は他の島とは異なるクレードに分けられた。

これら7集団において、オニグルミ種子に対する採食行動の比較も行った。オニグルミのない調査区を設け、そこからアカネズミを捕獲し、捕獲した日から毎日種子を1個ずつ与え、14日間連続して観察した。その結果、三宅島では、26頭中3頭のみ(11.5%)が14日後までに種子を採食した。他の地域の採食個体の割合は、神津島(65.9%)、高尾(55.2%)、伊豆半島(47.6%)、房総半島(35.0%)、伊豆大島(25.8%)、新島(8.1%)の順に低くなった。このように、伊豆諸島には本来オニグルミが分布していないが、その採食率には顕著な島嶼間変異が認められ、遺伝的に近い三宅島と新島のアカネズミにおいてとくに低い傾向があった。一方、体サイズに関しては、三宅島(小さい)と新島(大きい)で大きな違いが認められた。

日本生態学会