| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-175

モンゴル・ゴビ地域に同所的に生息するアジアノロバとモウコガゼルの衛星追跡

*伊藤健彦, 恒川篤史(鳥取大・乾燥地研究セ), B. Lhagvasuren, B. Buuveibaatar(モンゴル科学アカデミー), 岡田あゆみ(北里大・獣医), 高槻成紀(麻布大・獣医)

乾燥草原や半砂漠が広がるモンゴル南部のゴビ地域には、数種の大型野生草食動物が生息し、絶滅が危惧されている種も多い。そのうち、アジアノロバ(Equus hemionus)とモウコガゼル(Procapra gutturosa)は乾燥や積雪などに対応して長距離移動をおこなうと言われている。演者らのグループはこれまでにモウコガゼルの衛星追跡により、季節移動要因や移動の障害物の存在を明らかにしてきたが、同所的に生息するアジアノロバの移動の実態や環境要因との関係などはほとんど明らかになっていない。アジアノロバとモウコガゼルの分布域は重なっているが、アジアノロバは奇蹄類で体重約250kg、モウコガゼルは反芻胃を持つ偶蹄類で約30kgと、消化生理や体サイズが異なる。したがって、必要とする食物や環境が異なることが考えられ、生息地選択や移動パターン、移動要因も異なることが予想される。また、ゴビ地域は降水量や積雪範囲の年変動が大きいため、両種の生息地選択も年によって変化する可能性がある。これらを明らかにするため、この2種を対象に複数年にわたる衛星追跡から得られる位置データと、衛星画像などから得られる環境情報データの比較・解析による、移動および生息地選択の実態および要因解明を計画した。アジアノロバは麻酔銃・麻酔薬により、モウコガゼルはネットへの追込法により、2007年6月に各16頭の捕獲に成功し、衛星追跡を開始した。2007年11月にはさらに4頭のモウコガゼル追跡個体を補充した。本プロジェクトの目的、捕獲法の詳細とともに、追跡開始時から夏と冬を経過した時点での、両種の移動距離や移動パターンを報告する。

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