| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-180

アリ寄生性チョウ、ゴマシジミ幼虫のアリ巣への侵入プロセスにおける化学的役割

*関諒一(信大・理),市野隆雄(信大・理)

シジミチョウ科Lycaenidaeの多くのチョウは幼虫期にアリと共生関係を持つことが知られており、ゴマシジミ属Maculineaのチョウでは全ての種が幼虫期にクシケアリ属Myrmicaの巣に寄生する。チョウ幼虫は食草上で三齢まで生活し、四齢になると食草から降りてホストアリワーカーと出会い、ワーカーに運搬される事でアリの巣へ侵入・寄生する。寄生様式は種ごとに異なり、アリ巣内でワーカーから餌を貰う「カッコウ型(cuckoo)」と、自らアリ幼虫を捕食する「捕食型(predatory)」がある。「カッコウ型」においては、体表面の炭化水素組成をアリ幼虫のものに似せることでアリ巣へと運搬されるようにしている点、この化学擬態は複数種のアリに対して有効である点など、アリ巣への侵入プロセスにおける体表面炭化水素の化学擬態の重要性が明らかになっている。「捕食型」においても化学擬態の可能性は疑われてはいるものの実際に検証した例は無い。

本研究で用いたゴマシジミMaculinea teleiusは「捕食型」であり、日本国内におけるホストはシワクシケアリMyrmica kotokuiのみとされている。種特異性の高い日本産ゴマシジミを用いて、「捕食型」ゴマシジミのアリ巣への侵入プロセスにおける化学擬態の有無と役割について実験的に検証した。

日本生態学会