| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-242

渡良瀬遊水地におけるハイパースペクトルリモートセンシングを用いた絶滅危惧植物の生育環境特性の解析

*石井潤(東大院・農),鷲谷いづみ(東大院・農)

関東平野の北部に位置する渡良瀬遊水地は、本州以南で最大の面積(約3,300ha)を持つ湿地帯であり、ヨシとオギの高茎草本群落が発達する湿地の中に全国的に絶滅が危惧される植物が約50種生育する生物多様性保全上重要なウェットランドの1つである。筆者らは、第54回大会において、航空機搭載型ハイパースペクトルリモートセンシングを用いてヨシとオギのシュート密度を推定し、シュート密度比から下層植生タイプを地図化する手法を報告した。作成した地図を用いて絶滅危惧種8種の分布と下層植生タイプとの関係を解析した結果、絶滅危惧種の潜在的生育適地をいくつかのタイプに類型化することができた。

本研究では、現地に設けた20 ha(400×500 m)の調査エリアを10×10 mのメッシュに区切り、合計2000メッシュで絶滅危惧種の順位密度データを取得した。種ごとの潜在的生育適地をヨシおよびオギの総シュート密度とシュート密度比を指標として把握する可能性を一般化線形モデルを用いて検討した。まず、ハイパースペクトルリモートセンシングを用いて作成したヨシとオギのシュート密度地図から各メッシュのシュート密度データを抽出し、総シュート密度とシュート密度比を算出した。調査地で比較的高い出現頻度と密度を示した6種の絶滅危惧種を対象としてAICに基づくモデル選択を実施した結果、5種で総シュート密度あるいはシュート密度比が変数として選択された。以上の結果に基づいて、ハイパースペクトルリモートセンシングによって推定したヨシおよびオギのシュート密度から、絶滅危惧種の潜在的生育適地を地図化する手法の可能性について考察する。

日本生態学会