| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-258

海岸林における道路がアカネズミの行動圏に与える影響

*石原勇輝(新潟大・農),箕口秀夫(新潟大・自然科学系)

新潟県の海岸線では道路(車道)によって海岸林が長距離に渡って分断されており、海岸林に生息するアカネズミの行動圏に影響を与えている可能性が非常に大きい。アカネズミの行動圏が道路により分断された場合、コナラ属種子散布の制限など、海岸林の植生遷移に大きな影響を与えると考えられる。そこで、本研究では海岸林において道路がアカネズミの行動圏に与える影響について、主に道路を横断しているのかどうかから検証した。調査地は新潟県下越地方の海岸林の中から汀線近くに道路が通っている青山、荒井浜、桃崎浜、内陸に道路が通っている紫雲寺、中村浜、笹口浜の計6カ所を選定した。アカネズミの調査は記号放逐法で行った。道路の両側にシャーマン型生け捕りワナ15個を列状に設置し、更にこれと同様に林内にもう1列、道路と同じ幅だけ離して設置した。なお、この1列は道路の位置により、林帯幅の広い方のみに設置した。調査は9月から11月まで毎月、1列ずつ4晩連続で行った。今回の調査ではアカネズミの道路横断が中村浜、荒井浜の2調査地で確認された。中村浜では9月のみに繁殖状態の雄2個体が横断していた。一方荒井浜では9月に6個体、10月に3個体、11月に5個体の横断が確認された。こちらは繁殖状態の雄や雌、幼獣など様々な状態の個体が道路を横断していた。中村浜については繁殖期における行動圏の拡大により横断したと考えられる。しかし、荒井浜においてはそれだけではなく、生息環境の質や幼獣の分散など様々な要因が影響を与えていると考えられた。次に、道路を挟んだ列間と、道路を挟まない列間での個体の移動率を比較したところ、全ての調査地において後者の値が高かった。このことから道路がアカネズミの行動圏に多大な影響を与えていることが明らかとなった。

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