| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-263

水田再生地におけるカエル類の生息地利用

*豊田大輔(筑波大院・生命環境), 藤岡正博(筑波大・井川演習林)

水田は耕作によって維持される一時的な水域であり、カエル類の重要な産卵場所である。関東地方の特に茨城県や千葉県に見られる谷津は、1年を通して湧水が豊富な場所が多く、谷津田として利用されてきたが、平地の水田に比べて生産性が低く、大型農業機械の導入も困難なために耕作放棄されやすいといわれている。長い間休耕された水田は、植物が繁茂し水面が失われてしまうため、カエル類の産卵が困難になってしまう。2004年から2007年にかけて、茨城県霞ヶ浦流域の谷津田5地点において、二次的自然の回復を目的として、乾燥地化した休耕田を再生する事業が行われた。本研究では、水田再生地4ヶ所と継続的に耕作が行われてきた水田1ヶ所の計5ヶ所、計21枚の水田において、水田の水管理がカエル類幼生に与える影響を知ることを目的とし、2007年5月から7月にカエル類幼生のたも網による採捕と環境要因(水深、電気伝導度など)の測定、冬期の水分条件(湿田・乾田)についての聞き取り調査を行った。

調査の結果、3属5種のカエル類幼生が採捕され、総採捕数(5233個体)の90パーセント以上を占める3種について、一般化線形混合モデルにより解析した。ニホンアマガエル幼生は、乾田に比べて湿田で個体数が有意に少なく、一方で、シュレーゲルアオガエル幼生は、乾田に比べて湿田で個体数が有意に多かった。またニホンアカガエル幼生は乾田と湿田の間で個体数に差は見られなかった。これらのことから、カエル類幼生の個体数に与える水田の冬期の水分条件の影響は、種によって異なることが考えられた。

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