| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-291

アザミ2種が明かす、里草地管理の重要性

*古賀達朗(神戸大・発達),大沢剛士・三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館),丑丸敦史(神戸大・発達)

今日、多くの植物が絶滅の危機に瀕している。そのような植物の多くは、限られた環境でしか生息できず、また、生育に適した環境が急激に減少しているため、生育適地の環境解明や保全は急務となっている。そうした環境の一つが、草刈りなど昔ながらの手法で管理された里草地であることが、これまでの研究で明らかになっている。しかしながら、里草地といっても棚田、平田、溜め池、畑地の畦畔や二次林の陰伐地等多様な環境を含んでおり、実際にどのような環境が絶滅に瀕した植物の生育適地になっているのかは明らかにされていない。

そこで、本研究では、里草地に生育することが知られているノアザミとキセルアザミ(7県で絶滅危惧種に指定)という同属のアザミ2種を対象に、生育分布を調べ、GIS・統計解析を用いて、ノアザミ・キセルアザミの生育適地を明らかにすることを目的とした。調査地としては、兵庫県宝塚市西谷地区(下佐曽利から玉瀬までの地域、34゚54‘N、135゚18’E)の耕作地および旧耕作地を選んだ。宝塚市西谷地区は、里草地が広がっており、圃場整備が入らず昔のままの地形を保つ平田・棚田が残っている地区もあり、もともとのアザミ2種の生育適地を研究するのに適した地区である。

解析の結果、ノアザミもキセルアザミも共通して、溜め池からの距離が近く、森林からの距離が近い畦畔を好むことがわかった。さらにノアザミは、管理された畦畔を好んで生育していた。一方、キセルアザミは管理が放棄されやすい畦畔に分布していた。しかし、放棄地での分布は放棄が長期に渡ると植生遷移の進行にともなって減少することが予想される。

日本生態学会