| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-294

兵庫県における土地利用の変遷がツキノワグマの行動に及ぼす影響

*横山真弓,森光由樹,坂田宏志(兵庫県立大/森林動物研究セ), 木下裕美子,斎田絵里奈,江藤公俊,米澤里美(森林動物研究セ)

兵庫県では、ツキノワグマ保護管理計画に基づき、捕獲されたツキノワグマ(有害および錯誤)の学習放獣を実施している.最近の傾向として、従来出没が少なかった地域での出没や被害が多発しており、ツキノワグマが行動する範囲や移動ルートなどの変化が示唆されている.出没要因には、繁殖期の行動圏の拡大や秋の堅果類の豊凶、人慣れ行動、生息環境の変化など様々な要因が関係していると考えられる.なかでも近年の人による森林利用の変化、薪炭林や鉱山の衰退、拡大造林、耕作地の分布変化など長期的な土地利用の変遷は、ツキノワグマの行動に大きな影響を及ぼしていると考えられる.

そこで、学習放獣後のツキノワグマ9頭にGPSテレメトリーを装着し、行動監視を行うとともに、行動範囲における土地利用の変遷について解析した.土地利用のデータは、兵庫県における1900年代及び1950年代、1990年代の植生図をデジタル化した.現在ツキノワグマが行動・移動している森林では、1900年代から1950年代には荒地・草地が多く分布し、森林が断片化されていたことが明らかとなった.また、この時代には集落周辺においても荒地・草地が多く、ツキノワグマが移動する場所としては不敵な場所であったことが示唆された.1980年代以降はこれらの荒地や草地は、コナラ林などの広葉樹林に変化しており、ツキノワグマの生息適地としての質が向上していることが示唆された.

日本生態学会