| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-007

深泥池における訪花昆虫群集の変遷

*鈴木健司・丑丸敦史(神戸大・人間発達環境学)・竹門康弘(京大・防災研)

被子植物‐訪花昆虫共生関係の群集構造を調べることは、花や昆虫が共進化していく多様化のメカニズムや、その多様性がどのように維持されているかを明らかにするために重要である。本研究では、植物の種類によって花の構造・形・色・香り・資源量などがそれぞれ違い、訪花昆虫も身体の構造・大きさ・口吻の長さなどに違いがあることで、どのように群集構造が成立しているのかを調べたい。この研究を、京都の市街地の北端に位置し、面積約9ha・周囲約1kmの小さな池である深泥池で行った。この深泥池は全国でも有数な希少種の宝庫であり、多くの植物種が生息し、ハナダカマガリモンハナアブなどの珍しい訪花昆虫種が優占している。ここでは、これまでにも多くの研究がなされ、被子植物‐訪花昆虫の関係の研究もされている。また、池の構成は浮島の高層湿原・岸辺の低層湿原・その間の開水面・周りの二次林となっている。この浮島や周辺の二次林などの関連を訪花昆虫と被子植物の関係を通して明らかにすることは深泥池生物群集の成り立ちと現況を理解する上でも重要である。そこで、植生分布に対応した訪花昆虫の分布の実態も明らかにするため、植物種別に訪花昆虫の観察と採集を行った。

4〜10月の間、浮島上と池周囲に設定したルートでルートセンサスを行い、花のまとまりごとに訪花昆虫の採集・観察をした。その結果85種の植物種で141種、942個体の訪花昆虫が確認された。最も優占していたのはニホンミツバチの118個体、次にハナダカマガリモンハナアブの113個体だった。今回の結果と10数年前の調査とを比較してその変遷も調べた。その変遷について議論し報告する。

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