| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-022

コナラの種子と種子食昆虫と野ネズミの関係

*矢野舞依子(鳥取大・院・農), 佐野淳之(鳥取大・農・FSC)

コナラの種子は様々な動物に利用されているが、その中で多く利用しているのは種子食昆虫と野ネズミである。したがって種子食昆虫と野ネズミは種子を介して関わりあっていると考えられる。また、野ネズミは種子散布に関わっているといわれている。そこで本研究は種子食昆虫と野ネズミの関係をコナラの種子を介して明らかにし、これらの関係がコナラの種子散布にどのような影響を与えているのかを考察した。また、これらの関係に環境(ササと上木の有無)が影響するかどうかを調査した。

調査は2006年の10月初旬から11月初旬に行った。調査地は岡山県真庭市の蒜山地域にあるコナラ林で、下層にはチマキザサが繁茂していた。調査地にササ除去区a(1 m×3 m)、ササ除去区b(10 m×20 m)、伐採跡区(20 m×20 m)の3種類の実験区を設け、無傷種子5個と虫害種子15個を各実験区と対照区に置いて消失数を計測した。実験は計4回行った。調査地ではアカネズミとヒメネズミが捕獲された。両種にケージ内で無傷種子と虫害種子を与えて摂食数を計測した。

調査の結果、野外では10月中旬までは無傷種子と虫害種子の両方ともほとんど消失しなかった。しかし10月後半から11月初旬の間は大部分の種子が消失し、その期間においてどの実験区でも無傷種子が虫害種子よりも消失割合が高く、環境による違いはみられなかった。室内実験の結果もアカネズミとヒメネズミの両種とも無傷種子の摂食割合が高かった。これらの結果から、種子食昆虫の存在が野ネズミによるコナラの種子選択に影響を与えていることが示唆された。野ネズミと種子食昆虫の関係はコナラにとって健全な種子がより多く散布されるという正の影響があると考えられる。

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