| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-033

空間自己相関を用いた生物の分布と生息場所の解析:瀬戸内海における魚類と藻場の関係

*堀 正和,吉田吾郎,浜口昌巳((独)水研センター・瀬戸内海区),山北剛久,渡辺健太郎,仲岡雅裕(千葉大・理)

大型海藻やアマモによって形成される藻場は,魚類をはじめ沿岸域に生息する多くの生物のハビタットとして重要な生態系といわれる.しかし藻場を利用する生物の多くは広範囲に移動し,時には複数のハビタットをまたいで分布しているため,藻場内の生物量は単純に藻場内の要因だけでは説明できない.藻場の生息場所としての機能を明らかにするためには,藻場の影響が及ぶ空間範囲や他のハビタットとの組み合わせなど,景観構造に関する解析も重要である.

一般に生物の分布は生息環境の勾配に加え,移動能力の制限などのために空間的な自己相関を示すことが多い.したがって生物の空間分布と生息場所の真の関係を見出すには,空間自己相関に配慮した解析が必要となる.本研究では瀬戸内海の藻場と藻場を利用するメバルを対象に,メバルの空間分布に及ぼす藻場の影響を明らかにするために以下の解析を試みた.まずGIS上で瀬戸内海を約2100セルに区切り,各セルの藻場面積とメバルの量を計算した.次にメバルのデータから空間自己相関範囲と分布の中心を求めた.さらに分布の中心から任意のバッファを発生させ,バッファ内の藻場面積とメバル量の相関係数を計算した.また,メバルの空間自己相関範囲内における各セルのメバル量を目的変数に,藻場面積と他の景観要素(岩場,干潟,漁礁など)の面積を説明変数にして解析を行った.

メバルの空間的自己相関はMoran’s Iを用いた計算により半径20km弱と50kmに意味ある変化が見られた.また,バッファによる藻場面積とメバル量の相関係数の結果では,分布の中心から約半径15kmの地点で最も高い有意な相関が得られた.発表では他の解析結果も含め,メバルの空間自己相関と藻場の空間配置の関係,メバル量と景観要素の関係について議論する.

日本生態学会