| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-056

平野部に分布する二次草地は歴史性を反映している

*楠本良延(農環研),徳岡良則(農環研),山田晋(農環研),小柳知代(東大院),森田紗綾香(農環研),平舘俊太郎(農環研),山本勝利(農環研)

現在、わが国において絶滅の危惧に瀕している生物の中に、半自然草地に代表される草原性、または草原性依存の生物が多く含まれる。特に平野部において広く分布していた半自然草地は、急激な都市化や農業形態の変化に伴い、分布面積の減少、種組成の劣化、外来種の侵入などの影響で急激な衰退が懸念されている。

そこで、本研究では、平野部に分布する二次草地の植生調査を実施し、多様性の高い半自然草地(絶滅危惧種・希少種を内包する)の分布状況ならびに成立要因と維持機構を明らかにすることを目的とした。

対象地は筑波稲敷台地とし、2006〜2007年に1)植物社会学的調査ならびにコドラート調査を実施し、TWINSPANを用い群落タイプの分類を行った。次に、2)過去の地形図や空中写真の時系列解析により土地利用の変遷を把握した。3)管理形態の把握と調査地点の土壌理化学性の分析を行った。その結果、フジバカマやキキョウなどの絶滅危惧種を含む、多様性の高い半自然草地は、地形改変などの土地利用の変化を受けておらず、毎年の刈取り管理が行われ、施肥や耕起の土壌矯正が行われていない場所(土壌pH<5.7, 有効態P<20)に成立していた。一方、過去に大規模な土地改変や、畑地履歴を保持する場所では、毎年の管理が行われていたとしても、外来植物を多く含む二次草地が成立していた。平野部に分布する二次草地の成立には、その場所の歴史性を反映していることが示唆された。

日本生態学会