| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-066

渓畔林構成樹種の撹乱依存性-ギャップと氾濫原の稚樹分布の比較-

*沖慎司(秋田県立大・生物資源),秋好達朗(秋田県立大・生物資源),星崎和彦(秋田県立大・生物資源),星野大介(森林総研・東北),柴田銃江(森林総研・東北),大住克博(森林総研・関西),正木隆(森林総研) 

渓畔林では、河川の作用によって形成される多様な環境が多種の共存を可能にしているといわれている。渓畔林を構成する各樹種が更新期にそれぞれ異なる環境要求性をもつならば、それは種ごとに異なった更新木の分布様式に反映すると予想される。本研究では、渓畔林の主要な撹乱である林冠ギャップと地表撹乱の後に更新した稚樹の分布をもとに各樹種の撹乱依存性の抽出を試みた。

岩手県南西部のカヌマ沢渓畔林試験地内の林冠ギャップ(13ヶ所、計587 m2)と1988年の土石流によって形成された氾濫原(2ヵ所、計1295 m2)における更新稚樹(樹高30cm以上、胸高直径5cm未満)を対象とした。稚樹の分布パターンをクラスター分析によって異なる4つのグループに特徴づけ、グループ間および種間の比較を行った。その結果、渓畔林に特有なサワグルミ、オヒョウ、カツラ、トチノキの4種は、ブナ林で多く出現する他種のグループとは異なるグループを形成した。本数密度を比較すると、サワグルミ、オヒョウは氾濫原に、カツラ、トチノキはギャップに相対的に多く出現した。氾濫原ではサワグルミの分布が比較的明るいところに、オヒョウの分布がやや暗いところにみられる傾向があった。またカツラは、どちらのサイトでも大きな個体はほとんどみられなかった。

渓畔林に特有な4樹種は、更新稚樹がギャップと氾濫原の2つのタイプの更新サイトで種ごとに異なった分布を示したことから、撹乱に対する依存性が異なる可能性がある。樹種間の撹乱依存性の差は、さらに更新サイトの多様な環境パラメータを比較することで明確にできると考えられる。

日本生態学会