| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-071

野辺山高原におけるサクラソウ湿生群落の遷移と立地環境との関係

*佐野恭子(信州大院・農),大窪久美子(信州大・農)

信州大学農学部AFC野辺山ステーションにはズミ林の林床に絶滅危惧2類(VU)のサクラソウを含む湿生植物群落が自生しており,地域の在来群落として希少である。本研究ではサクラソウ湿生群落保全の植生管理を検討するため,本群落における3年間の植生遷移と立地環境との関係を明らかにすることを目的とした。調査プロットは2004年に2m×2mの方形区を36プロット設定し,同年6月および2007年7月に植生調査および立地環境調査(土壌含水率と相対光量子密度),秋季に毎木調査が行われた。土壌含水率および相対光量子密度は各プロットでランダムに9点測定された。

積算優占度を算出しTWINSPAN解析を行った結果,調査プロットは4群落型,出現種は5種群に分類された。C群落型はサクラソウやサクラスミレを含む種群で特徴付けられた。C群落型の植被率と群落高,遷移度は3年間の増加割合が最も高く,出現種数は林縁に位置するD群落型で最も高くなった。全群落型で乾燥化の指標であるミヤコザサと,クロツバラやサワフタギ等のクロツバラ−ハンノキ群集の標徴種である低木類が増加し,特にCとA群落型で増加が顕著で,遷移度が増加した。一方,ハンノキ群団の標徴種であるキツリフネやツリフネソウといった一年生草本の優占度は変化しなかった。D群落型では,他群落型で優占するオニゼンマイやカラマツソウが出現せず,他群落型で出現しないナガバノアキノウナギツカミや外来種等が増加した。土壌含水率はA,B,C,Dの順に高く3年前と傾向は変わらず,相対光量子密度は全群落型で低下した。DCA序列化法の結果,第1軸(固有値0.341)では左から右へ乾生から湿生群落の順に配列され,土壌含水率や植被率,遷移度において正の相関があった(p<0.05)。

日本生態学会