| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-110

ミミズ食オサムシ属幼虫間の体サイズ差はニッチ分化をもたらすか?

*奥崎穣(京大・理),曽田貞滋(京大・理)

オサムシ科オオオサムシ亜属では同所的に分布する種間に体サイズ分化が確認されている。食性の似た種間の体サイズ差は利用可能な餌の最大サイズにニッチ分化を生じさせ、共存を促進する要因である。オオオサムシ亜属では体サイズ差による競争緩和効果はミミズ専食の幼虫期に重要であると考えられる。この点を検証するために幼虫があるサイズのミミズ1個体と接触したときの摂取効率(捕獲成功率×満腹率)を推定した。京都周辺のオサムシ属3種(大、中、小型種)の幼虫に様々なサイズの地表性ミミズを与えて、捕獲成功率と摂取量を求めた。捕獲成功率はロジスティック回帰[y=1/(1+eax-b)]に、摂取量(満腹率)は非線形回帰[y=c(1-e-dx)]に当てはめた。その結果、幼虫はミミズのサイズを選択せず、明確なニッチ分化は無かった。しかし大型種幼虫はどのサイズのミミズでも捕獲に成功し、小、中型種若齢は大きいミミズの捕獲に失敗し易かった。また小型種は小さいミミズで満腹したが、大型種は満腹するために大きいミミズを必要とした。次に野外にて幼虫がミミズ1個体とランダムに遭遇したときのミミズ体サイズごとの摂取効率の期待値とその分散を、野外でのミミズ体サイズ頻度から求めた。その結果、京都の野外では若齢または小型種で摂取効率の期待値は高く、分散は低かったが、幼虫サイズが大きくなるほど期待値と分散も小さくなった。幼虫が次齢に進むために必要な餌摂取量は幼虫サイズに相関する。従って、小型種は小さいミミズが多い地域で摂取効率の分散が小さく、大型種は大きいミミズが多い地域で期待値が大きく、分散が小さくなると推測される。この結果は生殖場所ごとのミミズのサイズ分布が、オサムシ種のサイズ構成、個体数に影響を与えることを示唆する。

日本生態学会