| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-122

ラインセンサスにおける確認個体数の時期別変化 〜釧路湿原温根内の草原性鳥類〜

玉田克巳(道環境研)

夏鳥の減少が騒がれる中で、北海道ではシマアオジなどの草原性鳥類の減少が著しい。鳥類について、過去の生息状況はラインセンサスによって明らかにされている地域が多い。ラインセンサスについての研究は、森林性鳥類に関するものが多く、5〜6回の調査でその地域に生息する種がほぼ網羅できると言われている。しかし草原性鳥類を対象にした研究はほとんどない。そこで草原性鳥類を対象に、5回の調査を行った場合、どの程度の種が網羅でき、調査時期をどのように設定することによって効率的に生息状況が把握できるかを検討した。

調査は釧路湿原温根内地区にある2kmの木道を使って、繁殖期の4月下旬から7月中旬に、繰り返し22回実施した。この結果を用いて、5回の調査を行うことを想定して、5月に集中して行う場合(9回の結果から15,120通り)、6月に集中して行う場合(8回の結果から6,720通り)、5〜7月に等間隔に行う場合(960通り)に区分して、調査の組合せを作成した。この組合せから、確認できる種数と多様度指数(H'とlog(1/D))を算出した。

22回の調査で合計38種の鳥類が確認された。種数については、5月の組合せでは14〜21種、6月の組合せでは14〜20種、5〜7月の組合せでは13〜24種が確認できたことになり、5月の組合せでは種数が少なく、5〜7月の組合せで種数が最も多かった。多様度指数は6月の組合せが最も高く、次いで5〜7月の組合せが高く、5月の組合せが最も低くかった。このことから、5回の調査では、種数は5〜7月に等間隔に実施することで多くの種類が確認できるが、全体から比べて34〜63%程度しか確認することができないことが明らかになり、多様度指数は6月に集中的に調査をすると高い値が得られることが明らかになった。

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