| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-126

岡山市半田山における植生と鳥類相

*奥田圭(岡山理大・総情・生地),波田善夫(岡山理大・総情・生地)

植生と鳥類相の関係については,異なった地域間など,植生をマクロなスケールで捉えて比較することが多い.一方,鳥類は限定された植物や森林の構造を食餌や営巣地として利用しているはずである.そこで,本研究では群落や階層構造の異なる林において調査を行い,よりミクロなスケールで植生と鳥類相との対応関係を明らかにすることを目的とした.より詳細な植生と鳥類相との関係を明らかにすることにより,本質的な鳥類の保護や植生管理のあり方を考察できると考えた.

調査地は,岡山市の市街地に隣接する面積約68haの二次林である.調査は 2007年5月から8月にかけて,プロットセンサス的観点から143地点の鳥類調査と,その内の70地点の植生調査を行った.鳥類調査では種名・個体数・行動を記録した.植生調査は,相観から判断し,アカマツ林・コナラ林・常緑広葉樹林・ヒノキ植林,及びギャップにおいて調査し,群落区分した.

その結果,アカマツ群落ではスズメが優占し,コナラ群落ではメジロが優占した.常緑広葉樹群落ではメジロ・ヒヨドリ・スズメが優占し,ヒノキ群落ではメジロ・ヒヨドリが優占した.ギャップではウグイスが優占した.このように,鳥類相の種組成及び優占種は群落と対応関係がみられた.さらに,種別に階層構造との対応をみてみると,スズメは主に下層の植被率の低いアカマツ群落と常緑広葉樹群落の下層を利用していた.メジロ・ヒヨドリはどの群落においても出現したが,ヒヨドリは高木層の発達した林分を,メジロは亜高木層の発達した林分を中心に利用していた.ウグイスは主に草本層の発達した林分を利用していた.以上より,鳥類は種によって主に利用する群落が異なり,さらには,群落内においても空間的分布に違いがみられた.このことから,鳥類の保護にはその種に合った植生の管理方法を見いだす必要性があると考えられた.

日本生態学会