| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-127

孤立した都市緑地における草地破壊後のチョウ群集の回復様式

*大脇淳・中村浩二(金沢大・環日本海環研セ)

金沢城公園は石川県金沢市の市街地に位置する孤立した都市緑地である。ここは1949年から1994年まで金沢大学のキャンパスとして利用され、約5haの森と草地が残されていた。しかし、大学移転後の1996〜1999年に森の約3割が伐採され(森林伐採)、2000〜2002年に草地の大半は裸地化・舗装され大量の園芸植物が植えられた(草地破壊)。演者らは上記の人為的撹乱がチョウ群集に及ぼす影響を解明するため、金沢城公園の草地、林縁、林内といった様々な環境を通る調査ルートを設置し、1999〜2005年の7年間チョウのモニタリング調査をした。調査ルートは環境ごとにいくつかの区画に分割した。これまでの研究により、森林破壊で消失した種は未だ回復しないが、草地破壊で減少した種は草地の回復とともに速やかに個体数が回復しつつあることが分かっている。本講演では、(1)草地破壊によって減少した種としなかった種の食草や生息環境の違い、および(2)減少した種の回復様式を解析した。

草地破壊によって減少した種は草地や林縁といった明るい環境を好む草本食の種であったのに対し、減少しなかった種は森林に生息する木本食の種であった。減少した種の回復様式には、2つのパターンが認められた。一つは、草地破壊期間(2000〜2002年)も金沢城公園で観察されたが、観察される場所が変化した種である。このような種は、破壊された草地から別の場所に逃げ込むことで、その後の草地の回復とともに個体数を回復できたと思われる。もう一つは、草地破壊によって全く目撃されなくなったが、その後再び個体数が回復した種である。このことは、これらの種の回復は外部からの侵入によることを示している。これらの種の侵入・回復は地域的な個体数の動態と関連があるかを調べるために、近郊の里山における1999〜2002年のデータを参照して考察する。

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