| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-132

里山林を伴なった大学キャンパスにおける生態 (5)ガ類群集について

*城本啓子 , 桜谷保之(近畿大・農・環境生態)

ガ類(成虫)は夜行性の種が多く,生態系の中では送粉者としての地位や鳥類の餌としての地位にある種が少なくない.また,多くの種は正の走光性を持っていて,各種人工光にもよく集まる.近年,環境問題がとりあげられているなか,光害Light pollutionが深刻化している.しかし,照明が生態系に及ぼす影響を調査した報告は少ない.近畿大学奈良キャンパスは奈良市郊外の里山を主体とした丘陵地にあり,二次林,草地,圃場など多様な環境にある.校舎付近には水銀灯や蛍光灯など,外灯が多数設置されており,里山生態系になんらかの影響を及ぼしていると考えられる.そこで,本研究では2003年から2007年に,近畿大学奈良キャンパス内の駐輪場(約2000m2)の外灯(水銀灯5本,蛍光灯(40W)35本)において,コナラやクヌギなどの里山植生に大きく依存する大型のヤママユガ科ガ類の誘引状況とそれらの捕食者である鳥類の行動を調べた.奈良キャンパス構内の外灯下では多くのヤママユの翅が採集され,これをもとに被食個体数の推定を行った.その結果,特に雄個体が捕食されていることが分り,2004年以降,被食個体数が減少傾向にあり,特に2006年,2007年はかなり減少した.鳥類の観察結果からカラス類による捕食が確認され,外灯を餌場として利用していることが分かった.

以上のように,外灯によるヤママユの誘引が確認され,交尾行動の撹乱やカラス類などの捕食により間接的にヤママユ個体数の減少に影響し,さらに,コナラ等における消費者群集にも影響しているのではないかと示唆された.

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