| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-139

サンゴ礁に生息する沿岸性ウミアメンボを中心とした生物群集

*佐々木幹雄, 岩崎洋樹, 入江萩子, 滝 若菜, 青木優和, 渡辺 守(筑波大・院・生命環境)

南西諸島に生息するウミアメンボは、オーバーハング気味の崖下に沿って生じるサンゴ礁内の潮だまりやマングローブ林内の小さなよどみにおいて群れ生活をしている。ふつう、群れの性比は1:1に近く、幼虫も含まれている。彼らは海水面に浮かぶ昆虫類を吸汁する一方、魚類によって捕食されていると考えられてきた。そこで、群れの直上を飛び交う昆虫類を粘着トラップにより、群れの周囲の海水面を浮遊する昆虫類をプランクトンネットで、群れの生息する潮だまりやよどみに生息する魚類を投網で定量的に採集した。採集した魚は全て解剖して消化管を切開し、発見した昆虫類の破片を可能な限り同定した。潮だまりとよどみのどちらの場所においても、捕獲個体数順に、双翅目と膜翅目、半翅目、鱗翅目などが粘着トラップで捕獲され、双翅目の個体が最も多かった。特に、マングローブ林内のよどみの直上では体長1〜2mmの双翅目が多く、総捕獲個体数では潮だまりの3倍にもなっている。しかし、昆虫類の合計の現存量に大きな違いは認められなかった。プランクトンネットによって捕獲した海水面を浮遊していた昆虫類の個体数は少なかったものの、双翅目が優占するという直上群集の種組成と変わらなかった。サンゴ礁の潮だまりでは10種、マングローブ林内のよどみでは12種の魚類が捕獲された。共通で捕獲されたのは2種であった。解剖の結果、コモチサヨリとクロサギ、イソスズメダイ、トビハゼ、イセゴイ、ゴマアイゴは昆虫食であることがわかった。特に表層魚であるコモチサヨリの消化管内の昆虫の種組成は、それぞれの生息場所の直上の種組成と似ていた。なお、イセゴイの消化管からウミアメンボが発見されている。これらの結果から、サンゴ礁やマングローブ林に生息するウミアメンボを主体とした昆虫群集の構造を考察した。

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