| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-161

北関東におけるヒヨドリの生息密度推定法の検討

山口恭弘(中央農研・鳥獣害研)

ヒヨドリは北海道から沖縄まで日本全国、木のあるところならどこにでも生息する身近な鳥である。個体数も多く1年中見かけるが、実際に日本にどのくらいの数のヒヨドリが生息しているかは全く分かっていない。そこで、本研究では、北関東の農耕地帯においてヒヨドリの生息数を調べることにより、ヒヨドリの生息密度推定を行うことを目的とする。

調査は、2007年6月2日から7月10日にかけて、茨城県桜川市から牛久市まで南北36km、東西18kmの範囲に1kmメッシュを648設置し、その中でランダムに選んだ32箇所の調査メッシュにおいて行った。日の出から4時間以内に調査メッシュの中を徒歩、自転車を使ってくまなく周り、ヒヨドリがさえずっている地点を地図に記入した。

調査時間は41時間49分に及び、1メッシュあたり平均1時間18分(最大2時間55分)を調査に費やした。確認されたヒヨドリのさえずり地点の総数は512であり、平均は16であった。ヒヨドリは一夫一妻でさえずりは雄しか行わないため、ヒヨドリの繁殖個体の密度は32羽/km2と考えられた。

メッシュ内で優先する環境別に、メッシュを分類して密度を推定すると、森林のメッシュが最も高く71.0羽/km2となり、次いで林地の47.0羽/km2、市街地の37.2羽/km2となった。一方、畑地は25.4羽/km2、水田は14.8羽/km2となり木の少ない場所ではヒヨドリが少なくなることが分かった。当然ではあるが、湖沼のメッシュでは12.0羽/km2であり、ヒヨドリは湖岸沿いの林に観察されるのみであり、湖沼上でさえずっている個体はいなかった。

以上のことよりヒヨドリは木に依存して生息しており、水田や畑地、湖沼など木のない環境には少ないことが分かった。発表までにはGISを用いて解析し、より詳細なヒヨドリ密度推定法を検討できるようにしておく予定である。

日本生態学会