| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-172

エゾシカによる列車運行支障件数の動向

*稲富佳洋(北海道環境研),車田利夫(北海道環境研),玉田克巳(北海道環境研),北海道旅客鉄道株式会社

北海道では、2001年度に「エゾシカ保護管理計画」を策定し、エゾシカの個体数管理を実施している。その実施手法であるフィードバック管理における個体数指数(1993年度の生息数を100とした相対的生息数)の一つとして、JR北海道の一部路線において線路内へ立ち入ったエゾシカによって列車の運行に支障をきたした件数(以下、「支障件数」という。)を採用している。しかし、個体数指数として最も信頼性の高いライトセンサスの指数が、1998年のピークの後に一時的に減少し、2000年以降は概ね90前後で安定推移しているにもかかわらず、支障件数の個体数指数は、1998年が238と高く、2003年以降はさらに急激な増加を示し、2006年の指数は過去最高の314となった。このように、支障件数の個体数指数は、エゾシカの個体数動向を正確に評価できていない。これは、1年間の累積件数を用いて個体数指数を算出していることが原因の一つと考えられ、適正な個体数指数として利用するためには、エゾシカの季節移動や土地利用を考慮した解析が必要と指摘されている。そこで本研究では、1993年度から2006年度における全道の支障発生のデータを用い、支障件数の地域的な分布、季節変動及び経年変化を明らかにすることを目的とした。

その結果、支障の発生割合が高い特定の区間(ホットスポット)が存在すること、多くの路線において支障件数の推移に明確な季節変動パターンが存在すること、北海道西部地域では、年々支障の発生した位置の分布が拡大していることなどが明らかとなった。

本発表では、このような支障件数の動向が、エゾシカの分布や季節移動とどのような関係にあるのかを考察する。

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