| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-196

水田生態系における絶滅のおそれのあるゲンゴロウ類の生息の現状と環境要因

*西原昇吾(東大・農学生命科学),角谷拓(東大・農学生命科学),鷲谷いづみ(東大・農学生命科学)

わが国の水田やため池は、一時的〜永続的止水域として、水生生物の生息場所を提供してきた。しかし、農薬の使用や圃場整備、伝統的な管理の衰退、侵略的外来種の侵入などにより、絶滅の危機にある種も少なくない。中でもゲンゴロウ類は、上述の原因や乱獲のために減少傾向が著しく、その保全は緊急性が高いが、生息の現状や生態に関する知見は限られている。

本研究では、能登半島平野部において、水田周辺に生息するゲンゴロウ類の生息の現状を把握し、生息に影響する環境要因を明らかにすることを目的とした。

2003〜06年の野外調査の結果、絶滅のおそれのある中〜大型のゲンゴロウ類(ゲンゴロウ、シャープゲンゴロウモドキ、マルコガタノゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、マルガタゲンゴロウ)が確認された。これらは主にため池に生息しており、この地域の219の池のうち、63ヶ所でいずれかの種が確認された。しかし、105の池では管理が放棄されており、侵略的外来種オオクチバス(5ヶ所)、アメリカザリガニ(1ヶ所)も確認された。

ゲンゴロウ類の生息と関係する環境要因を明らかにするために、5種それぞれの生息の有無と、現在も貯水されている128の池の環境要因(面積、浮葉植物の有無、管理の有無、護岸の近代化の有無、外来魚の侵入の有無)との関係について、ロジスティック回帰を用いて分析した。その結果、ゲンゴロウ、クロゲンゴロウでは、浮葉植物の存在が有意な正の効果を示した。さらに、5種の分布密度の最も高い地域の22の池の、上記と同様の環境要因と各種の生息個体数の関係について、ポアソン回帰を用いて分析したところ、面積、浮葉植物の存在、管理の継続が多くの種で有意な正の効果を示した。

以上より、ゲンゴロウ類の保全には、植生の豊かなため池および、伝統的な管理の維持が重要であることが示唆された。

日本生態学会