| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-203

アカゲラにおける営巣地選択と繁殖成績の関係

森 さやか(東大・院・農学生命)

なわばり性の動物の個体分布を説明するモデルとして理想専制分布がある.このモデルでは,高質または先着の個体は高質のハビタットを占有し,なわばり行動によって低質や後着の個体を排除する.パッチを1つ以上のなわばりがある範囲とすると,個体は最高質のパッチから利用し,他のパッチは最高質のパッチに残された場所でなわばりを持つのと同じ質のときに利用されると考えられる.したがって,このモデルによると,個体群レベルでは,個体群密度が増加すると (1) 高質パッチ内のなわばり数が増え,(2) 低質パッチの利用割合が増加する.

本研究では,森林の分断化した調査地 (約40km2) における,計6年間のアカゲラの営巣記録を分析した.パッチの質は,(1) 利用頻度 (頻繁に利用されるパッチはより有利という仮説),(2) 資源量 (採餌と営巣に不可欠な森林の面積率),(3) 繁殖成績,(4) 個体の生残年数,で評価した.

利用頻度の高いパッチ内の営巣数は個体群密度にともなって増えたが,パッチの利用頻度分布はランダムでないとはいえず,個体群密度が増えると低質パッチの割合が増加するとはいえなかった.利用頻度の高いパッチのなわばりでは森林面積率が高かったが,利用頻度と繁殖成績に相関はなかった.また,個体は入れ替わる場合が多く,長く生残する個体はわずかだった.繁殖失敗の原因には,巣の捕食や他の2次樹洞利用動物による干渉があった.

アカゲラは,資源量が多い森林面積率の高い場所を選択すると考えられるが,その効果は繁殖成績や個体の生残年数には反映されていない.森林面積率の高い場所では他種や同種他個体からの干渉といったコストが増え,森林面積率の低い場所での採餌や移動のコストの増加を相殺するため,利用可能なパッチにランダムに営巣している可能性がある.

日本生態学会