| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-211

外来種セイヨウオオマルハナバチの野生化集団における女王の体サイズと適応度

井上真紀(東大・農),横山潤(山形大・生物),鷲谷いづみ(東大・農)

セイヨウオオマルハナバチBombus terrestrisは、温室栽培トマトの授粉昆虫として1991年に導入されて以降、おもに北海道で定着が進んでおり、近年、大雪山や道東の原生花園など保全上重要な地域への侵入も報告されている。生態系保全の観点から、セイヨウオオマルハナバチの定着個体群を適切に管理する必要があり、そのためには、本種の個体群動態を決定する変動主要因を解明することが重要である。そこで本研究では、セイヨウオオマルハナバチの生活史を営巣期および単独期に分け、各生活史ステージにおける個体群動態パラメーターを解析し、個体群成長ポテンシャルの推定を試みた。

営巣期においては、野外よりセイヨウオオマルハナバチ25巣を探索・採集し、コロニー成長と繁殖虫生産について分析・評価した。総生産繭数は、発達期(働きバチの生産期)に分類された巣では104.7±99.1(N=7)、成熟期(繁殖虫の生産期)に分類された巣では377.5±168.6(N=17)であった。営巣に成功した巣の新女王生産数は109.5±76.7(N=12)であった。

単独期においては、女王の越冬期および創設期の成功率を推定した。その結果、越冬成功率は44.0%、創設成功率は11.8%であり、これらの成功率を積算した潜在的営巣成功率は5.2%となった。これらの結果から、1巣で生産された新女王110頭のうち、5.7個体が営巣に成功して個体群成長に寄与すると推定された。

本調査地域における個体群は飽和状態にあるが、より広域的にみた場合、セイヨウオオマルハナバチの定着地域が放出源として機能しうることから、分布拡大ポテンシャルは高いと考えられる。

日本生態学会