| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-231

外来植物の選択的除去が在来植物および群落構造に及ぼす影響

川田清和(農業環境技術研究所), 池田浩明(農業環境技術研究所)

近年,侵略的外来種の侵入による生態系の単純化や地域の固有性の喪失が問題視され,駆除活動も盛んに行われている.しかし,外来植物の駆除が,在来種の多様性を回復させることを裏付ける科学的根拠は十分とはいえない.そこで,本研究は外来植物であるアレチウリとオオブタクサの選択的除去による在来種数の変化から外来種の駆除が在来種に及ぼす影響を明らかにした.本研究は,茨城県を流れる小貝川の中・下流域においてアレチウリ5地点,オオブタクサ6地点の植生調査を行った.各調査地点では3 × 3 m の調査枠で,対象外来種をそのままにした放置区,対象外来種を除去した除去区,対象外来種の侵入していない対照区の3区を設置した.除去区における対象外来種の選択的除去は毎月1回行った.外来植物と在来植物の季節変化を追跡するため,2007年の5月・7月・9月に植生調査行った.7月の在来種数は,アレチウリの放置区と対照区は有意差が認められたが,除去区と放置区および対照区と放置区の間に有意差は認められなかった.一方,オオブタクサは全ての季節において在来種数に有意差は認められなかった.すなわち,アレチウリの生育初期における選択的除去が有効であることが示唆された.この結果から,アレチウリを春季に選択除去することによって夏季の在来種数の低下を防ぐことができると考えられた.しかし,アレチウリ・オオブタクサともに全ての季節において放置区・除去区・対照区の種多様度指数に有意差は認められなかった.アレチウリおよびオオブタクサの除去区では,カナムグラやミゾソバのような在来植物や除去対象外の外来植物が優占していた.すなわち,外来植物を選択的に除去すると蔓延力の高い植物種に置き換わり,群落の種多様性は回復しないことが示唆された.この結果から,単純に外来植物を除去するだけでは種多様性の低下を回避できないと考えられた.

日本生態学会