| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-239

外来木本ナンキンハゼの分布拡大に対する制限要因

*奥川裕子(広島大・総科),中坪孝之(広島大・院・生物圏)

外来植物を緑化や植栽に使用する場合、在来種への影響を考慮して管理することが重要であり、その為には個々の外来種の生態学的情報を集積することが必須である。ナンキンハゼは中国原産の鳥散布型木本で、現在南東アメリカ沿岸部の草地内を中心に侵入・野生化し、大きな問題となっている。それに対して日本では、広く植栽されているにも関わらず現在のところ一部の地域を除き顕著な問題となっておらず、何らかの要因により分布拡大が制限されていると予想される。そこで本研究では、ナンキンハゼの生態学的特性を調査することにより、分布拡大に対する制限要因を明らかにし、今後の分布拡大危険性を考察した。

調査地は広島大学東広島キャンパス内とした。このキャンパスにはアカマツを主体とした二次林が点在しており、その付近にナンキンハゼが植栽されている。野外調査の結果、ナンキンハゼの植栽樹から50m以内の比較的明るい林内に実生・稚樹が確認された。3月から8月にかけて圃場へ播種した種子と自然状態での種子発芽時期を調査したところ、発芽は5月下旬から始まり、落葉樹の展葉が完了した6〜7月においても断続的に発芽が認められた。実生の耐陰性を調べる為、圃場(オープンサイト)と林内3地点にポット植え一年生実生を置き、背丈・葉の数を6月下旬〜9月下旬にかけて一週間毎に計測したところ、相対光量子密度が5%未満の林内では、樹高・展葉数が著しく低下し、落葉直前の乾燥重量は圃場の個体の1/10以下であった。

以上の結果から、ナンキンハゼは光要求性が高いにも関わらず発芽時期が遅い為、林内への侵入が制限されていることが示唆された。

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