| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-252

千曲川中流域におけるハリエンジュ河畔林の窒素蓄積量

*井出功一,赤松史一,島野光司,戸田任重(信州大・理)

日本の河川では近代以降の流路掘削・流量調整の結果,河畔域に比高の高い安定的な領域が生じている.このような領域に侵入し広く樹林化するマメ科の外来種ハリエンジュ(Robinia pseudoacacia ,別名;ニセアカシア)について,これまで治水あるいは生物多様性への影響についてその諸問題が報告されてきた.一方,栄養塩などの物質動態への影響という観点では,ハリエンジュの窒素固定による河畔域土壌の肥沃化の可能性が示唆されているものの,その具体的な物質量について明らかでない.

そこで本研究では,長野県千曲川中流域のハリエンジュ河畔林について地上部と土壌中の窒素含有率を求め,河畔域における窒素の蓄積量について検討した.地上部の窒素については河畔域のハリエンジュ生物量調査と樹木各部の元素分析により算出し,土壌については深さ 30 cm までの総窒素量として,面積あたりで算出した.毎木調査を2006年と2007年の2度行うことで,生長量もあわせて求めた.

千曲川のハリエンジュの最大群落について,Basal Area 16.6 m2 ha-1,地上部窒素含有量 384 kg N ha-1,固定された正味の窒素 17 kg N ha-1 year-1 の値を得た.他の地域との比較により,千曲川のハリエンジュ林は森林としての規模が小さい傾向が示された.一方,土壌中の窒素については河岸から離れるに従って増加し,河岸から最も遠い地点ではシルト質の未発達土壌ながら3,621 kg N ha-1の窒素が蓄積していることが分かった.

日本生態学会