| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-296

遷移段階の異なる森林における土壌呼吸の違いとその要因の解明

*高橋健太(茨城大・理),廣田充(筑波大・菅平高原実験センター),根岸正弥,大塚俊之(茨城大・理)

独立栄養生物呼吸(根呼吸)と従属栄養生物呼吸からなる土壌呼吸(SR)は、様々な要因から影響を受けるが、そのような要因のうち植生がSRにどのように影響を与えるかは詳しく解明されていない。そこで本研究では、植生が異なる森林生態系のSRがどのような要因から影響を受け、どう変化するかを解明することを目的とした。SRに影響を与える要因として地温・土壌水分に加え、地下部植生にも着目し研究を行なった。

調査は同じ平地上に種組成が異なる林分が隣接している筑波大学菅平高原実験センターで行なった。そこで、アカマツが優占するアカマツ林と、アカマツ・ミズナラが混成する混交林においてコドラート(30m×30m)を1つずつ設置した。胸高断面積はそれぞれ46.4、19.6m2 ha-1であった。SRは各サイト20〜30個のチャンバーをランダムに設置し、密閉法を用いて6月〜11月の間に計5回測定し、同時に深度5cmの地温、土壌水分も測定した。また6月に測定地点の深度20cmまでの土壌に含まれる根を採取し、種と太さに分けて定量化した。

SRは調査期間中に、アカマツ林、混交林それぞれ62.3〜744.1、39.2〜609.5mgCO2 m-2 h-1と変動し、アカマツ林の方が高かった。各サイトでの地温・土壌水分には差が見られなかった。呼吸活性が高いといわれる細根量はアカマツ林、混交林それぞれ145.7、152.3g m-2で有意差はなかった。またSRと根の量との間に相関は見られなかった。地下部植生の種組成は、アカマツの根が根全体に占める割合がアカマツ林15.6%、混交林5.6%となり、サイト間で異なった。これらの結果から、地下部植生の量ではなく、種組成がSRに影響を与えうる可能性が示唆された。

日本生態学会