| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-014

異なる地下水位がウラジロハコヤナギの根系分布および成長に及ぼす影響について

*今田省吾, 山中典和, 玉井重信(鳥取大・乾燥地研)

地下水は、乾燥地域に生育する樹木にとって重要な水資源である。この地域では水位の高さが土壌水分量に大きく関わるため、その変化が樹木の成長量の変化を引き起こすことが予想される。ウラジロハコヤナギ(Populus alba L.)は、乾燥地域の河畔域に生育する樹木であり、水位変化に対する順応性・適応性を有していると推察される。第54回大会では、異なる高さの水位に設定した30日および60日後に、細根長の垂直分布が処理区間で変化したことを報告した。今大会では、地上部の成長がほとんど停止した90日後の結果を加えて細根成長の経時変化を調査するとともに、根の成長と個体の成長との関係を解析した。

実験は、鳥取大学乾燥地研究センター敷地内のビニールハウスにおいて、地下潅水システム(60 Lのポットを潅水用パイプで連結)を用いて行った。各ポットには砂丘砂を充填し(深さ45 cm)、2005年6月に1年生のウラジロハコヤナギ苗木を植栽した。地下水位処理は、土壌表層から深さ45 cm、30 cm、及び15 cmに固定した3区、及び45 cmと30 cmとの間を変動させた1区とした。処理は7月から9月までの90日間継続し、変動区の水位は30日間で一往復させた。処理開始から30日間隔で掘り取り調査を行い、根長および現存量を測定した。

苗木の細根長の成長は、水位のすぐ上層および地表面付近の層において促進され、水位以下の層で抑制された。また、水位変動域において細根長の経時的な成長が認められ、根系が滞水を経験した後に細根の再生産が可能であることが示唆された。このように、ウラジロハコヤナギは水位による土壌環境の変化に応じた根系分布を示した。個体あたりの根長と現存量との間には、水位処理の違いに関わらず同様の関係が認められた。異なる水位条件下では、根系の吸水面積の変化が個体成長を制御する要因となったようだ。

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