| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-016

シュートの同化構造と抑制芽の形成との関係

*伊藤 哲(宮崎大・農),塚本麻衣子(宮崎大・農)

多くの広葉樹は、当年生シュートに形成された腋芽のうち、翌年に開芽・分枝せずに残存した抑制芽をbud bankとして蓄積し、撹乱時の萌芽再生の原基として維持している。抑制芽の形成数は、腋芽の形成数やその後の分枝率など、シュートの同化構造にかかわる樹種特性に大きく依存すると予測される。本研究では、広葉樹103種についてシュート形成から2年間の腋芽及び抑制芽の分布を解析し、シュートの同化構造の特性と抑制芽の形成との関係を明らかにすることを目的とした。

腋芽の密度、腋芽の残存率(非分枝率)および抑制芽の密度を測定し、シュートの同化構造の諸特性(葉序、腋芽の分布様式、短枝形成の有無、葉の大きさおよび葉の形状比)が異なる樹種間で比較した。腋芽密度は葉序と強く関連しており、葉序がらせん生の樹種で対生または2列互生の樹種より腋芽密度が高かった。腋芽の残存率は腋芽の分布様式および短枝形成の有無と強く関連しており、腋芽がシュートの上端部および基部に集中して分布する樹種で均等に分布する樹種より腋芽の残存率が高かった。また、側枝に短枝を形成しない樹種で短枝を形成する樹種より腋芽の残存率が高かった。すなわち、抑制芽密度が高い樹種の特性として、葉序がらせん生であること、腋芽が集中して分布すること、側枝に短枝を形成しないことが挙げられ、このような樹種には単軸分枝タイプの樹種が多いことが明らかになった。一方、抑制芽密度の低い樹種には、葉序が対生または2列互生で腋芽が均等に分布し、側芽に短枝を形成する樹種を多く含んでおり、仮軸分枝タイプの樹種が多かった。仮軸分枝タイプの樹種は、光獲得のために空間を効率的に利用した葉群配置が可能である。したがって、そのような同化構造を持つことと、撹乱で同化器官を失うことに対する備えとして抑制芽を形成することの間には、トレードオフの関係があることが示唆された。

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