| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-058

温帯常緑針葉樹(ヒノキ)林のガス交換過程を反映する分光植生指標

*松本卓也,小杉緑子,大久保晋治郎(京大・農),西田顕郎(筑波大・農林工),小熊宏之,中路達郎(国環研)

森林のガス交換特性の解明を地球規模で行うために、リモートセンシング情報の利用が注目されている。これまでに分光反射を用いていくつかの植生指標が提案されているが、これらの有用性はまだ十分に明らかになっていない部分も多い。そこで本研究では、リモートセンシングを使って森林の生産量評価をするための基礎的研究の一つとして、ヒノキ林における様々な分光植生指標(主にPRI・NDVI・WBI)の特性を調べ、ガス交換量推定に対する有用性を評価することを目的とする。

観測は滋賀県南部に位置する桐生水文試験地(優先種はヒノキ)のタワー(29 m)で行った。2004年8月から2007年12月まで、全天分光日射計(PGP-100, プリード)と放射計自動回転装置を用いて上方と下方から分光放射量を連続測定した。また同様に渦相関法によりCO2および潜熱フラックスを測定し、日射量・光合成有効放射(PAR)・気温・湿度・地温などの気象要素を測定した。光合成の光利用効率(LUE)は群落光合成速度をPARで除することで求め、群落光合成速度は樹冠上で測定したCO2フラックスから土壌・幹の呼吸速度を差し引いて求めた。

葉面積指数やクロロフィル量との相関が報告されているNDVIは夏季に極大となり秋季〜冬季かけて減少した。光合成活性を示すといわれるPRIは春季から上昇して秋季で極大となり冬季に急激に減少するという季節変化が見られ、晴天日におけるLUEの季節変動パターンと相関が見られた。葉の水分量を示すといわれるWBIは冬季に大きくなって春季に小さくなり、また夏季には大きくなり秋季に小さくなるという季節変動が見られた。またPRIとWBIは、NDVIには捉えられない日変化のような短期的な変動にも応答することが明らかになった。

日本生態学会