| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-076

ホオノキ果実内の種子自殖率・遺伝的多様性の個体・年による変動

松木悠(京都大院・農),舘野隆之輔(鹿児島大・農),柴田銃江(森林総研),井鷺裕司(京都大院・農)

ホオノキMagnolia obovataは、日本の温帯から暖帯にかけて分布する落葉広葉樹で、森林内に低密度に分布する。ホオノキの花は雌性先熟で寿命は3-4日ほどだが、個体としては約1ヶ月間花期が続く。そのため性ステージの異なる花が個体内に同時に存在し、個体内での花粉移動(隣花受粉)が高頻度で起こっていることが報告されている。一方でホオノキにおいては、実生や稚樹の段階での強い近交弱勢が確認されていることから、繁殖成功や適応度には自殖率が大きく影響していると考えられる。また、ホオノキは1年ごとに個体群内でほぼ同調して豊凶を繰り返すことが知られており、開花量の変動によって自殖率や種子の遺伝的多様性のパターンも変動していることが考えられる。

本研究では、複数年に渡ってホオノキの果実を採集し、種子の遺伝解析を行うことで、種子の自殖率や遺伝的多様性の年変動を解析した。茨城県北茨城市の小川学術参考林において、2003年から2005年にかけてホオノキの樹冠に登攀し、成熟した果実を採集した。採集した果実から健全な種子を取り出し、インキュベータにおいて16度12時間、24度12時間の温度変化を繰り返すことで発根させた。2003、2004、2005年にそれぞれ8488、360、2743個の健全種子を植付け、2007年10月までにそれぞれ866、60、1343個の種子で発根が確認された。このうちおよそ1300サンプルの根からDNAを抽出し、11遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝子型を決定し、果実ごとに自殖率、遺伝亭多様性を算出した。これらの結果から、年や個体による種子の遺伝的特性の変動パターンについて考察する。

日本生態学会