| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-078

ヤマウルシの繁殖生態:繁殖成功における雌雄異株の花序とジェネラリストポリネーターの役割

*松山周平(京大院・農),大澤直哉(京都大・農),嵜元道徳(京大フィールド研)

動物媒介性植物の繁殖システムは、スペシャリストやジェネラリストポリネーターによって維持されている。多くの雌雄異株性植物は、ジェネラリストポリネーターに送粉されるといわれているが、ジェネラリストポリネーター、特に、非社会性の小型バチ、ハエ類、甲虫類による送粉様式や送粉の有効性はよく分かっていない。本研究では、雌雄異株ヤマウルシにおいて、個体レベルの花ディスプレイサイズ、訪花昆虫相とその頻度、結果率を調べた。さらに、潜在的なポリネーターを雌花序と共に袋がけすることにより、結実能力があるかどうかを調べた。

雄個体の花ディスプレイサイズは雌個体よりも有意に大きくなっていた。ヤマウルシは126種のジェネラリストポリネーターに訪花されていた。ハチ目の訪花率は、他の目の訪花率よりも有意に高く、ハチ目では、訪花率は種間で有意に異なっていた。さらに、いくつかの種のみが有意に雄に偏っていた。結果率は、有意な年変動を示した。潜在的なポリネーターを袋がけした実験では、少なくともヒメハナバチ属・コハナバチ属の数種はヤマウルシ雌花を結実させることを確かめた。これらの結果は、本種におけるジェネラリストポリネーターは2つの機能タイプに分けられることを示唆していた。1つは、大多数の非社会性バチ、ハエ、甲虫であり、これらの訪花率は雄に偏らないことから、トータルで雄に偏る訪花率を補償する事を示唆していた。2つめは、少数の社会性ミツバチ類である。ヤマウルシの個体あたり開花量は年変動することが分かっており、結果率の年変動は、社会性ミツバチ類が報酬に応じて採餌対象を変動させていることによって生じていることを示唆していた。したがって、ヤマウルシは開花数が著しく年変動するものの、2つのタイプのジェネラリストポリネーターによる送粉様式によって、最低限の結実数を実現している可能性が指摘された。

日本生態学会