| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-105

熱帯山地林に生育する19樹種の稚樹の個葉特性と分枝様式との関係

*塩寺さとみ, 甲山隆司(北大・環境科学)

熱帯には, 単軸のものから分枝の多いものまで, 様々な分枝様式を持った樹木が存在する. 樹木にとって, 個葉を効果的に配置することは, 限られた資源を利用して効率の良い光合成を実現するために重要であるので, 個葉面積は樹木のアロメトリーを反映していると考えられている. そこで, 分枝様式の異なる19種の木本の稚樹(10〜400 cm)を用いて, 個葉面積と樹木のアロメトリー(一次枝数 vs. 樹高, 樹高 vs. 直径, 個葉数 vs. 直径)との関係について, 階層ベイズモデルを用いて解析した. 19種のうち5種は低木, あとの14種は高木の稚樹であった.

19種の個葉面積は16.4 〜109 cm2 と大きな幅を示した. 個葉面積は一次枝数, 葉数, 樹高と強い負の相関関係を示した. これにより, 個葉面積の小さい種では, 一次枝数が多く, 葉数が多く, 樹高が高いことが示された. 個葉面積の大きな種では逆の傾向がみられた. 調査対象種のうち5種は低木であったが, 個葉面積や樹木のアロメトリーには, 成木サイズによる違いは見られなかった. 個葉面積とアロメトリーの関係は, 樹木個体が小さな時(直径 = 0.5 cm)とある程度成長した後(直径 = 2.5 cm)とでほとんど変化しなかった. しかし, 一次枝に対して二次枝の数が多い種では, 成長にともなって高さ成長への投資が制限されており, 同じ直径でも他の種と比べると低い樹高を持つことが分かった. 個体全体の葉面積を比較すると, 個葉面積の小さい種は大きい種よりも直径あたりの総葉面積が大きいことが示唆された. しかしながら, 個葉面積の大きいさとLMAとのあいだに相関はみられなかった. このことから, 総葉面積だけではなく総葉重においても, 個葉面積の小さい種の方が大きな値を持つことが示された.

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