| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-146

日本産フユシャク類の系統地理

*山本哲史,曽田貞滋

時間的隔離による種分化はこれまであまり研究されてこなかった。クロテンフユシャク(鱗翅目、シャクガ科)は冬に成虫が羽化する年一化性の昆虫で、日本列島に広く分布する。成虫の季節消長は、関東や京都など平地において1山型であるが、中部地方や北関東の山地では初冬と晩冬をピークとする2山型であることが知られている。2山型消長は、積雪や気温の著しい低下などによって、真冬には成虫が活動できないために起こると考えられている。このことから、初冬型と晩冬型は繁殖のタイミングがずれ、同所的集団間でも生殖的に隔離されている可能性がある。

我々はこれら初冬型と晩冬型生活史の進化機構を明らかにするために、日本各地でクロテンフユシャクを採集し、初冬型と晩冬型の遺伝的構造および生活史進化を明らかにするために、ミトコンドリアCOI遺伝子518bpの塩基配列を用いて系統地理解析を行った。また核マーカーを用いて初冬型、晩冬型集団間の集団遺伝学的解析もあわせて行い、生活史の進化と種分化について考察する。

日本生態学会